TNFD スコーピングと発見 (Locate)、診断 (Evaluate)、評価 (Assess)、準備 (Prepare)
TNFD スコーピングをわかりやすく

まず初めに、スコープの設定「スコーピング」です。これは、LEAPアプローチに入る前に、事前に調査をしておくことを指しています。それは、「作業の仮説を立てる」ということと、「目標とリソースの調整」、この二つの内容から成り立っています。
「作業の仮説を立てる」というのは、具体的には、自然関連の依存とインパクト、リスクと機会にどのような理解を持っているか、バリューチェーンの上流と下流においてどのような活動や資産を所有しているか、該当セクターはどの地域、どのバリューチェーンにいるか、該当する活動の収入、支出、収益はどの程度か、などをあらかじめ把握しておくものです。
「目標とリソースの調整」というのは、例えばLEAP評価に対する組織の目標と期待される成果は何か、TNFD開示で重要なステークホルダーは誰でどのような情報が重要か、バリューチェーンの複雑さを考慮し、現時点でどの程度の評価が可能か、分析期間、関連する事業活動、セクター、地域、生物群は何か、などを把握しておくものです。これらは、あらかじめできる範囲内で大まかな概要を把握する程度で良いでしょう。その後に、LEAPアプローチに入っていきます。
TNFD 発見 (Locate)、診断 (Evaluate)、評価 (Assess)、準備 (Prepare)について

最初のステップが「発見」です。この発見というのは、自社またはバリューチェーンにおける、地域や自然との接点を見つけること、これを発見と言っています。TNFD提言においては、この自社の事業活動が、生態系のどのポイントにおいて接点を持っているのか、ここが全てのスタートとなります。したがって、そこの接点を見い出すところが、このLEAPアプローチで最も重要な部分になっているわけです。そのプロセスは、L1からL4の四つのステップからなっていて、まず最初にビジネスモデルとバリューチェーンの範囲を把握しておき、そこから依存とインパクトのスクリーニングを行い、その中で自然との接点を発見していくことになります。それらの中から、インパクトを受けやすい地域との接点を見い出していくという流れになっています。このようにして、事業活動と自然との接点を見い出していくのが、ここの発見という段階になります。

それでは、この接点を発見したあと、依存とインパクトについて、「診断」していくことになります。つまり、企業がどのように依存し、どのようなインパクトを与えているのかを把握するということです。そしてこれは、この後に続くリスクと機会の理解を深めるための、不可欠な前提条件になっているわけです。そのプロセスは、まず初めに環境資産、生態系サービスとインパクトドライバーの特定に取り組みます。その結果、依存とインパクトを特定し、測定し、評価をする、このような流れになっています。

このようにして、依存とインパクトについて把握できたら、その後に「評価」を行っていくことになります。この評価というのは、リスクと機会に関するものです。先ほどの依存とインパクトの評価に基づいて、リスクと機会を特定して、優先的に開示すべきリスクと機会の明確化を行うものです。そのプロセスというのは、先ほどの依存とインパクトから、リスクと機会の特定を行い、そしてリスクと機会の管理の調整、それから優先順位づけを行い、リスクと機会の重要性の評価を行う流れになっています。

これらをもって、最後に「準備」に入っていきます。ここでは、情報開示の準備として、対応策の戦略やリソース配分、目標への測定方法などの明確化を行っています。そのプロセスは、まず初めに戦略とリソース、配分計画を行っていきます。その後に、ターゲット設定とパフォーマンス管理を行っていきます。この時に行うターゲットの設定ですけれども、これは科学的な知見に基づいたターゲット設定を行う必要があるために、SBTs for Natureという技術ガイダンスの活用が推奨されています。これについては、後ほどご説明いたします。このようにしてターゲット設定を行った後、報告と公表の準備に進めていくわけです。

それでは、このLEAPアプローチについての測定指標についてまとめたものが、こちらの表になります。

「発見」のところでは、生態系の健全性、生物多様性の重要性、水に関する物理的リスク、その他の企業データなどが、測定指標として考えられます。
そして、次の「診断」のところでは、インパクト要因、自然の状態、生態系サービスのようなものです。
次の「評価」のところでは、リスクと機会に関するところで、物理的リスク、移行リスク、システミックリスク、それと機会、このようなものが測定指標となります。
最後の「準備」のところでは、管理、ガバナンス、戦略などのような測定指標となります。
以上のようなLEAPアプローチを繰り返していくことで、TNFD提言に向けた準備を整えていくことになります。
TNFD スコーピングと発見 (Locate)、診断 (Evaluate)、評価 (Assess)、準備 (Prepare)について総括
- スコープの設定(スコーピング):
- LEAPアプローチに入る前の事前調査であり、主に「作業の仮説を立てる」と「目標とリソースの調整」の2つから成る。
- 作業の仮説を立てる:
- 自然関連の依存とインパクト、リスクと機会に対する理解を深め、自社やバリューチェーンの活動や資産、地域、収入、支出、収益を把握する。
- 目標とリソースの調整:
- LEAP評価における目標、期待される成果、重要なステークホルダー、評価可能な内容(分析期間、関連事業活動、セクター、地域、生物群)を把握する。
- LEAPアプローチの最初のステップ「発見」:
- 自社やバリューチェーンにおける地域や、自然との接点を見つけることが重要。
- 依存とインパクトのスクリーニングを経て、自然との接点を明らかにしていく。
- 依存とインパクトの特定と評価:
- 自社がどのように依存し、どのようなインパクトを与えているかを把握し、リスクと機会の理解を深めるための前提条件となる。
- 環境資産、生態系サービス、インパクトドライバーの特定、依存とインパクトの特定・測定・評価を行う。
- リスクと機会の評価:
- 依存とインパクトの評価に基づいて、リスクと機会を特定し、優先的に開示すべきリスクと機会を明確化する。
- 特定から優先順位づけ、重要性の評価を行う。
- 準備:
- 情報開示のために、対応策の戦略、リソース配分、目標への測定方法を明確化。
- SBTs for Natureを利用して、科学的知見に基づくターゲット設定を推奨。
- 測定指標:
- 発見: 生態系の健全性、生物多様性の重要性、水に関する物理的リスク、企業データ。
- 診断: インパクト要因、自然の状態、生態系サービス。
- 評価: 物理的リスク、移行リスク、システミックリスク、機会。
- 準備: 管理、ガバナンス、戦略。
- 繰り返しの重要性:
- LEAPアプローチを繰り返すことで、TNFD提言に向けた準備を整備することが可能である。
このように、LEAPアプローチはTNFD提言に備えるための連続的かつ体系的なプロセスとして位置づけられています。