TNFDの優先地域とは? また、生物多様性の優先地域とは?
生物多様性とTNFDの優先地域とその領域

そして、戦略の一番最後である戦略Dですけれども、これはTNFDに特徴的な項目になっております。その内容は、「優先地域に関する基準を満たす、自社において可能ならばバリューチェーンにおいて、資産や活動がある場所を開示」となっております。これは具体的な場所を開示してくださいという意味になり、その場所というのは2種類、「マテリアルな地域」と「要注意地域」と区分してあり、この二つの地域をまとめて「優先地域」としています。この、優先地域に関しては、TNFDのガイダンスで説明がなされており、マテリアルな地域と、要注意地域というものを指していると記載されています。
マテリアルな地域とは何かといいますと、これは「自社やバリューチェーンにおいてマテリアルな自然関連の依存とインパクト、リスクと機会を特定した地域」となっております。どういう意味かと言いますと、実際に事業活動を行った上で、依存とインパクト、リスクと機会が発生した地域とお考えください。実際に事業活動において、そういったことが発生しているということは、その地域に対して現実的に影響を及ぼしている地域ということです。それは、「重要な課題を持っていると認識できる地域」とご理解ください。従って、現時点で実際に生態系に対してこのような影響を及ぼしている地域ですから、このマテリアルな地域というのは、きちんと明示をして、そこに対する対応策を開示しなければならないということになります。これが、マテリアルな地域です。
要注意地域というのは、その依存とインパクト、リスクと機会が見出だせていない、その他の部分について、自然や事業活動が「自然と接する場所」とご理解ください。この二つを合わせて優先地域と定めていて、この場所を開示するのが、戦略Dの内容になります。また、自社が資産や活動を有する地域のリスト、空間地図、これらの開示も推奨されていて、例えば、空間地図と言いますと、日本地図を記載して、その上に対象となる優先地域の場所をマッピングして、開示するなどを指しています。戦略Dでは、このような優先地域に関する場所を開示することがまとめられています。これについても、好事例を見てみることにしましょう。
TNFDの優先地域とLEAPアプローチへの生物多様性の好事例

東京海上ホールディングスのTNFD REPORTですけれども、自社の営業拠点の分析評価として、バリューチェーンを含めて、生物多様性の保護地域や、生物多様性重要地域、これの所在を分析評価したと記載されています。その結果として、実際の所在場所が文章中に記載されています。それを表にしたのが右側です。これを見ると、国内グループ会社と、保険代理店、これらがバリューチェーンに相当するものと思われます。それぞれについて、保護地域と生物多様性重要地域、それぞれの拠点数が表にまとめられているといった内容です。このようにして戦略については、戦略A、戦略B、戦略C、戦略D、の4つの項目が開示されております。

総括:TNFDの優先地域とは? また、生物多様性の優先地域とは?
- 戦略Dの特徴: TNFDに特有の項目であり、「優先地域」に関する基準の開示を求める内容。
- 優先地域の定義: 「マテリアルな地域」と「要注意地域」の2種類に区分され、両者を総称して「優先地域」と呼ぶ。
- マテリアルな地域:
- 自社やバリューチェーンにおいて、自然関連の依存とインパクト、リスクと機会が特定された地域。
- 実際の事業活動による影響がある地域であり、重要な課題を持つと認識される。
- 要注意地域:
- 依存とインパクト、リスクと機会が見出だせない地域であり、自然と接する場所と理解される。
- マテリアルな地域:
- 情報開示の方法:
- 自社の資産や活動がある地域のリストや空間地図の開示が推奨される。
- 空間地図は、日本地図上に優先地域をマッピングして表示する例がある。
- 好事例:
- 自社の営業拠点やバリューチェーンに関連する生物多様性保護地域や重要地域の所在を分析評価し、具体的な地理情報を表(チャート形式)で示している。
- まとめ: 戦略Dでは、優先地域の開示が求められ、具体的な地域情報を提供することが重要とされている。戦略AからDまでの4つの項目が開示されることで、より透明性のある情報提供が目指されている。