SSBTサプライヤーエンゲージメントと顧客エンゲージメント評価

目次

スコープ3にみるSBTサプライヤーエンゲージメントと顧客エンゲージメント

出典:環境省 グリーン調達推進ガイドライン

 この図をご覧ください。まずは、この企業自身が環境効率性の向上などに取り組むということは前提としてあり、そこからサプライヤーに対して環境配慮物材などを要求して、それを受けて得られたものが環境配慮製品として顧客へ送り出されるわけです。そして、この時の売上や収益を拡大させるということ、そして同時に支払いを縮小させるということを狙っているわけです。この流れは、全て環境視点に則ったサプライヤーマネジメントになっています。この原動力はどこにあるかというと、この企業の株主、投資家、金融機関が、環境視点でのESG投資の流れが高まっていて、これによるリターンを要求していることから、環境視点に伴ったこのようなバリューチェーンマネジメントが働いているということになっています。

出典:環境省 SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック

 そこで、実際のグリーン調達の取り組みについて四つのステップが考えられています。まず、一つにサプライヤーの動機づけとして、削減策に取り組む必要性や意義等を理解してもらい、排出削減に取り組む動機づけを実施するということです。これを受けて調達基準の設定として、例えばSBT目標を設定させるということです。

 その後に購買契約へ落とし込んで、さらにはこのような取り組みをサプライヤー全体に展開していくということを図っています。つまりグリーン調達として、今の4つのステップを経ることによって、具体的なサプライヤーエンゲージメントとしては、そのエンゲージメントの対象を特定し現状把握して支援を実施、さらには個々の取り組みの展開をして、サプライヤー群全体に展開していく、などを行っているわけです。

 そして、このような取り組み全体を通じて、サプライヤー自身の評価を行い、その結果としてのインセンティブの付与、なども行っています。こういったサプライヤーへのエンゲージメントが、行われているわけです。このような考え方のもと、具体的にどのようにエンゲージメントが実行されているのかを、次にご紹介します。

出典:環境省 SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック

 上の図は、縦軸にサプライヤーの重要性、横軸にサプライヤーへの影響力を示したものです。サプライヤーの重要性というのはサプライヤーへの支出額、サプライヤーへの影響力というのはサプライヤーの総売上げに占める自社の支出割合でみています。そして、この会社ではこれだけの数のお取り先企業があり、このマトリックスにそれぞれの会社をマッピングしていきます。その際、エンゲージメントとして対象となるお取り引き先企業を絞っていくという作業に入っていきます。

 例えば、サプライヤーへの重要性が高くて影響力が高い右上の領域がその対象となり、その中でもこの円の大きさがその取引先企業のGHG排出量の大小を意味しており、またこの円の色は、この改善ポテンシャル削減の伸びしろ大きさを表しているわけです。そうする中で、優先順位の高いサプライヤーと言っているのは、右上の領域の中でもGHG排出量が大きいB社やF社、その中でもさらに改善ポテンシャルが高い削減の伸びしろが大きいF社が、その対象として候補に上がってくるわけです。

 このようにして、お取り先企業に向けたエンゲージメントの優先順位をつけて、実行に移していくということになります。それでは、具体的なエンゲージメントの事例についてご紹介したいと思います。

サプライヤーエンゲージメントに向けた事例

出典:トプコンのグリーン調達 – TOPCON webページ

 株式会社トプコンの事例です。まず、会社の紹介をいたしますと、東証のプライム市場に上場しており、グループ会社としては連結子会社で65社、関連会社で9社です。資本金は167億円、売上高は2,156億円です。社員数は連結で5,500名、事業内容は、衣食住に関する社会的な課題をDXで解決するグローバル・ソリューション・プロバイダーということで、東証プライム市場においては精密機器セクターに区分されている企業です。

 こちらの企業では、ホームページに「グリーン調達」として明確に記載がなされています。グリーン調達の目的ですけれども、「環境負荷や環境リスクを考慮した事業活動を進め、製品を構成する部品、材料、ユニット、製品、副資材などについて、環境負荷の小さい納入品の調達を行うことを目的とします」と明言されています。

 具体的なエンゲージメント目標の達成に向けた取り組みについても、二つご紹介します。一つ目は、「環境保全活動を推進している取引先様からの調達」ということで、具体的には、「ISO14001外部認証取得、グリーン調達、および環境保全活動に関する取引先様の取り組みについて評価・判定します。」と明記されています。

 取り組みの二つ目としては、「環境負荷が小さい製品、部品、材料、原料の調達」とありまして、これは実質的に、スコープ3の上流工程、特にカテゴリー1に関する内容を規定しているものです。株式会社トプコンは、「調達品を下記の通り品目特性で三つに分類(商品に関わる材料等の調達品・生産活動に関わる調達品・文房具等事務用品)」というように、具体的に明記しているわけです。このように、実際のサプライヤーエンゲージメントが行われているわけです。こういったことは、多くの上場企業ではよく見られることでして、この他にもいくつかその例は見て取れます。

目標とするSBTサプライヤーエンゲージメントと顧客エンゲージメント

出典:環境省 SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック

 例えば、アスクル株式会社の場合、取引先企業としてA社製紙会社を挙げてあり、このA社からコピー用紙の大部分を購入している場合です。そうすると、アスクル株式会社からは、SBT目標達成の協力要請をするわけです。これを受けて、A社がもし協力同意するも生産工程の情報開示には至らなかった場合、アスクルはどうするかというと、その情報について、この後説明しますが「CDP回答」いうのを掛けます。それによって、情報開示に至らなかった情報を入手することができます。その情報を得て、A社に対して削減対策を提案していく、というようなことが行われているようです。

出典:環境省 SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック

 また、上図のサントリーホールディングス株式会社の場合では、原材料の調達として、ここに記載されている様な品目が挙げられていて、その中でも特にGHG排出量が多いものを特定します。ここでは、異性化糖というものに着目した場合、まずこれを自社内で改善する、ということを行います。それを終えた後に、今度はサプライヤーにもエンゲージメントを働きかけていきます。この異性化糖に対して納入先を列挙して、その中で購入割合が一番高いサプライヤーA社を特定し、ここに対してエンゲージメントをかけていく、というようなことが行われているようです。

 このようにして、特に上場しているような大企業に関しては、サプライヤーマネジメントを徹底することによって、GHG排出量削減を実施しているということになります。これを受けて、サプライヤーを担っている中小企業の場合、どのような具体的な対応をしていったらいいのか、このことについて具体的に考えていくことにしましょう。

SBTサプライヤーエンゲージメントと顧客エンゲージメント評価について総括

  • GHG排出管理の流れ:
    • 企業は環境効率性を向上させ、自社で調達した環境配慮製品を顧客に提供。
    • 売上や収益の拡大を狙いながら、支払いを縮小することを目指す。
  • 環境視点のサプライヤーマネジメント:
    • 株主や金融機関がESG投資を重視し、企業にリターンを要求することでバリューチェーンマネジメントが促進される。
  • グリーン調達の4つのステップ:
    1. サプライヤーの動機づけ: 削減策への取り組みの重要性を理解させ、動機を高める。
    2. 調達基準の設定: SBT目標を設定し、サプライヤーに求める基準を明確にする。
    3. 購買契約の取り組み: 環境配慮を考慮した契約を結ぶ。
    4. サプライヤー全体への展開: 全体にこの取り組みを横展開する。
  • サプライヤーエンゲージメントの対象特定:
    • 重要性と影響力に基づき、サプライヤーをマッピングし、優先順位をつける。
    • 右上の領域に位置するサプライヤーが優先され、特にGHG排出量や改善ポテンシャルが高い企業に重点を置く。
  • 具体的な企業の取り組みの例:
    • グリーン調達の明確な目標を設定。環境保全活動を行う取引先からの調達を評価。
    • 主要取引先にSBT目標達成の協力を要請し、情報開示を促す。
    • 特定の原材料(この場合は異性化糖)のGHG排出量を改善し、納入先へのエンゲージメントを図る。
  • 中小企業への影響:
    • 大企業がSBT目標を設定すると、サプライヤーである中小企業もそれに応じた対応が求められる。
  • サプライヤーマネジメントの重要性:
    • 大企業による徹底的なサプライヤーマネジメントを通じてGHG排出量削減が行われ、中小企業もその取り組みに対応する必要がある。
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