リモートワークの働き方改革における人的資本経営の重要性
リモートワークによる働き方改革に向けた人的資本経営
ここでは、人材版伊藤レポートの要素5、「時間や場所にとらわれない働き方」についてご紹介いたします。いつでもどこでも働くことができる環境を整えるということは、事業継続の観点から必要性が高まってきています。一方で、働き方に対する人々の意識が多様化する中で、マネジメントの在り方や、業務プロセスの見直しを含めて、組織としてどのように対応できるかが重要になってきています。そこで、リモートワークに対する考え方について、整理をしていくことにしましょう。

1つ目に、リモートワークを円滑化するための、業務のデジタル化の推進が挙げられます。これは、リモートで働くことを前提にて、組織と個人の生産性を維持・向上させるように、業務のデジタル化を進めていく必要があります。さらには、必要な人材を確保する観点からも、このような体制を構築する重要性が増してきています。
2つ目に、リアルワークの意義の再定義と、リモートワークとの組み合わせが挙げられます。これは、自社の事業にとって、社員がオフィスに集まって仕事を進めることの意義や有効性を再考して、リアルワークとリモートワークの最適な組み合わせを実現する必要があります。この時に、組織と個人のパフォーマンスの最大化を図るため、リモートワークとリアルワークをどのように戦略的に組み合わせるか、方針を明確にする必要があります。
そこで、次にリモートワークにおける課題について解説をしていきます。
リモートワークにおける課題

コロナ禍における影響を発端として、リモートワークが急速に進みました。ここでは、その時に行ったテレワークにおける不安感・孤独感に関する調査結果を示しています。この結果を見てみますと、総じて様々な不安を抱えていることが分かりますが、その中でも特徴的な結果を挙げると、大きくは「評価不安」と「コミュニケーション不安」の2つが挙げられます。
評価不安というのは、上司や同僚から仕事をサボっていると思われていないか不安だ、とか上司から公平・公正に評価してもらえるか不安だ、による不安感を抱えていることが分かります。
もう1つはコミュニケーション不安で、非対面のやり取りは、相手の気持ちが察しにくく不安だ、が最も高く約40%を占めています。
これらを解決するためには、リモート環境下において安心して働くことができる環境を整えることが求められるでしょう。例えば、同じ時間や空間で働いていない多様な個人を束ねていくためには、これまで以上にマネージャー層のリーダーシップやマネージメントスキルが欠かせない要素となります。また、こうしたマネージメントに対応できるマネージャーの育成も必要になるでしょう。その上で、業務プロセス自体が見えにくくなる環境であることから、タスクのアサインの仕方や育成・評価なども合わせて最適化していく必要があります。さらにはリモートワークでも業務が完結できるような、新しい業務プロセスの構築も求められていくでしょう。このような視点に立って、業務のデジタル化を取り入れながら環境改善に取り組んで行くことになります。
それでは次に、このような取り組みに対する好事例をご紹介いたします。
人的資本経営を向上させるリモートワーク事例とやり方
ここでは、リモートワークに関する取り組みの好事例をご紹介いたします。株式会社サイバーエージェントです。

具体的な取り組みとしては、「業務用フォルダのクラウド化」「ビデオ会議システムの導入と運用」「契約書・請求書のオンライン化対応」「従業員のコンディション把握」「印鑑作業のデジタル化」などの多くの業務がリモートワークに対応しているということです。このような取り組みによって、業務効率の改善と、ストレスなく業務を継続できる環境づくりを目指して、デジタル化を実施しているということです。

そして、この運用実績についてのグラフが上図であり、これはコロナ禍における影響を発端として、ビデオ会議利用時間推移やVPN利用者数推移ともに2020年以降、全従業員に対してリモートワークを推奨した結果、利用が急増していることが分かります。このようにして、リモートワークでもパフォーマンスを落とすことなく働ける環境づくりを実施しているということです。

更にこれを機にリモデイと銘打って、全従業員を対象に特定の曜日をリモートワークとする運用を始めたということです。これにより、オフィスへの出勤とリモートワークを併用するハイブリッド型の働き方を取り入れているとしています。
また、このような働き方について、アンケートを実施しています。株式会社サイバーエージェントにおける社内アンケートは、天気で回答するシステムになっていて、リモートワークについて質問したところ、約60%が晴れと肯定的に答えています。このことから、概ねリモートワークに順応していることが伺えます。
この様にして今まで見てきましたように、最終的には組織と個人のパフォーマンスを最大化させるようなリモートワーク環境構築を目指していく必要があります。

総括:リモートワークの働き方改革における人的資本経営の重要性
- 働き方に対する意識の多様化:
- マネジメントの在り方や業務プロセスの見直しが必要となる。
- リモートワーク円滑化のための施策:
- 業務のデジタル化の推進:
- リモートでの働き方を前提に、業務のデジタル化を進める。
- リアルワークの意義の再定義:
- 社員がオフィスで働く意義を再考し、リモートワークとの最適な組み合わせを模索する。
- 業務のデジタル化の推進:
- リモートワークに関する課題:
- コロナ禍でリモートワークが普及したが、不安感や孤独感が社員間で存在する。
- 主な不安には「評価不安」と「コミュニケーション不安」があり、特に非対面でのやり取りに懸念が見られる。
- 安心して働ける環境の整備:
- マネージャーのリーダーシップやマネジメントスキルが重要。
- 業務プロセスの透明性を確保し、タスクのアサインや評価方法を最適化する必要があります。
- 株式会社サイバーエージェントの取り組み:
- 業務用フォルダのクラウド化やビデオ会議システムの導入など、リモートワークに対応した多くの施策を実施。
- 最終目標:
- 組織と個人のパフォーマンスを最大化させるリモートワーク環境の構築を目指す。