ネイチャーポジティブの達成に向けたCOP15による生物多様性の保全
ネイチャーポジティブ向けたCOP15の取り組み

2022年12月に採択された昆明モントリオール生物多様性枠組と呼ばれるもので、これはGBF(Global Biodiversity Framework)と呼ばれるものです。内容はネイチャーポジティブに向けた取り組みで、大きく2つの内容に分かれています。長期的な視点に立った2050年ビジョンと、中期的な2030年ミッションです。
この長期的な2050年ビジョンは『自然と共生する世界』を掲げて、それを達成するために、上に書いてあるような4つのゴールを設定しています。
そして、中期的な2030年ミッションは『自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動を取る』という事で、ネイチャーポジティブに向けた具体的なミッションが掲げられています。その内容は、2030年ターゲットとして、大きく3つの柱から成り立っています。1つ目は生物多様性への脅威を減らす、2つ目に人々のニーズを満たす、3つ目にツールと解決策、というものです。そして、これらを合わせた合計23個のターゲットが、設定されています。これによって、ネイチャーポジティブに向けた取り組みを行うのが、昆明モントリオール生物多様性枠組の中身となっているわけです。そこで、ここでは2つをご紹介したいと思います。
1つはメインとなる取り組み、(1)生物多様性への脅威を減らす、ということを受けたターゲットの3つ目「30by30」、それと(3)ツールと解決策、として我々の関心事の中心であると考えられるターゲットの15番目、「ビジネスの影響評価・開示」の2点について紹介したいと思います。
昆明モントリオール生物多様性枠組と国家戦略との関係

初めに、この昆明モントリオール生物多様性枠組を受けて、日本は国家戦略を新たに立てました。ここにあるのがその生物多様性国家戦略で、これを見ると2050年ビジョン、自然と共生する社会、これはそのままですけれども、これを受けた中期的な2030年に向けた目標、ネイチャーポジティブの再現ですけれども、これについて日本は国家戦略として5つを掲げています。それが基本戦略と呼ばれているもので、その基本戦略の中身というのは、その下に状態目標、そしてさらには行動目標、というのが基本戦略の中に設定されています。それが5つあって、国家戦略として成り立っているものです。
その中で先ほどの30by30というのは、国家戦略の中でも「基本戦略1」の中の行動目標に定められています。また、企業における情報開示等の促進ですけれども、これは「基本戦略3」ネイチャーポジティブ経済の実現、という中の行動目標に位置付けられているものです。これを、先ほどの昆明モントリオール生物多様性枠組と、国家戦略との対応関係の中で表したのがこの図になります。2030年ターゲットとして、23個あるターゲットの中の30by30は、ターゲットの3番目に位置付けられているわけで(赤印)、これを受けて国家戦略としては基本戦略1である「生態系の健全性の回復」の中の行動目標1-1に掲げられているわけです。同じように、ターゲット15番目の「ビジネス」では、国家戦略としては基本戦略3「ネイチャーポジティブ経済」に位置付けられていて、その中でその生物多様性に関する「開示」については、行動目標3-1に定められているということになります。それではまず初めに、行動目標1-1の30by30についてご紹介して参ります。
ネイチャーポジティブ向けたCOP15による30by30

基本戦略1「生態系の健全性の回復」として、ここでは環境省の資料をお示ししています。30by30ですけれども、これは2030年までに陸と海の30%以上を保全する新たな世界目標、という事を受けて、日本の保護地域を30%まで拡大するということが掲げてあります。このことによって、絶滅リスクが3割減少する見込みということです。生物多様性の改善、生態系の確保を意図しているものとなっています。これによる効果としては、気候変動の改善や災害に強い国土の安全保障、そういったことが期待されていて、健全な生態系の回復、豊かな恵みを取り戻す、これらは自然資本のことを表していると思いますけれども、こういったことを狙っているものです。
この環境省の資料に補足いたしますと、現在日本では国立公園や国定公園などの保護地域が陸地で20.5%、海洋で13.3%となっています。これを2030年に向けて、30by30では陸地・海洋ともに30%以上を目指すということになっています。具体的にこれを行うにあたって、国や地方公共団体への取り組みだけでは、達成は困難であることが分かっているそうです。そこで民間の保全取り組みと連携するということを行っていくそうです。具体的には、民間の取り組みとして保全に努めている活動が現在行われています。このような地域に対して、国が「自然共生サイト」と認定します。それをその認定を受けて、この生物多様性の保全に資する地域を拡大していく、ということが行われていくことになっています。このような取り組みが、国家戦略として掲げられているわけです。

もう1つご紹介するのが、こちらの基本戦略3「ネイチャーポジティブ経済の実現」というものです。その中で生物多様性に対する開示、ということが行動目標3-1で掲げられています。この基本戦略の資料を見てみますと、国際的なイニシアティブ、SBTs for NatureやTNFD等の参加・賛同・認定を受けている企業の数または割合という事で、現状の企業数が218であるものが目標値として300をあげています。そして、このような生物多様性の配慮に関する目標設定及び情報公開を行っている企業の数または割合は、現状の目標設定55%、情報公開74%であるものを、目標値として目標設定60%、情報公開80%を掲げています。この生物多様性の取り組みに関わる情報開示ですが、これについてはTNFDが最も重要であるとされています。そしてこのTNFDですが、この賛同団体数は現状45ですが、それを90まで引き上げることを掲げています。
このようにネイチャーポジティブ経済の実現、ということから端を発して、それぞれの企業がその企業活動を通じて生物多様性に対する積極的な取り組みが求められている状況にあり、その情報開示をTNFDを通して行っていく、ということが今後ますます求められていく状況にあります。そこで次に「TNFD」と、続いて「SBTs for Nature」について解説を進めていきたいと思います。

総括:ネイチャーポジティブの達成に向けたCOP15による生物多様性の保全
- 昆明モントリオール生物多様性枠組:
- 「ネイチャーポジティブ」に向けた取り組みを含む。
- 大きく2つの内容:2050年ビジョンと2030年ミッション。
- 2050年ビジョン:
- 自然と共生する世界を掲げ、4つのゴールを設定。
- 2030年ミッション:
- 生物多様性の損失を止め、回復させる緊急の行動を推進。
- 2030年ターゲット:
- 大きく3つの柱:生物多様性への脅威を減少、人々のニーズを満たす、ツールと解決策の提供。
- 合計23個のターゲットが設定されている。
- 基本戦略の掲示:
- 日本は国家戦略として5つの基本戦略を設定。
- 30by30や企業の情報開示促進が重要視されている。
- 基本戦略3:ネイチャーポジティブ経済の実現:
- 生物多様性に関する開示の行動目標3-1が設定されている。
- 国際的なイニシアティブ(SBTs for Nature、TNFD)への参加と情報公開数の増加が目標としている。
- TNFDとSBTs for Nature:
- 企業が生物多様性に対する積極的な取り組みを促進することが求められている。